お墓まるわかり!-知っておきたい意味や歴史、お墓の種類と選び方-
日本人の暮らしとともにあるお墓。種類から選び方まで知っておきたいことをご紹介します。
日本では、亡くなった方を火葬して、お墓に埋葬するのが一般的な風習です。ここでは、古くから日本人の暮らしとともにあるお墓について、総合的に解説します。
▶ そもそもお墓とは?
▶ 日本独特のお墓の精神的な役割
▶ お墓事情の移り変わり
▶ お墓の無縁化
▶ 多様化するお墓の種類
▶ 知っておきたい墓地の管理運営主体と特徴
▶ 希望を実現する為のお墓探しから完成までの流れ
▶ お墓は価値観に合わせて選ぶ時代
そもそもお墓とは?
お墓とは、亡くなった方を弔うためのご遺骨の収蔵場所です。厚生労働省による「埋蔵法」にもとづいて、定められた墓地に建てられた塔や石碑をお墓と呼ぶこともあります。
日本では「お墓を建てる」または「代々継承しているお墓にご遺骨を収蔵する」ことが一般的ですが、これはあくまで長い年月のあいだに定着した独自の習慣であり、義務ではありません。宗教との関連性もないので、外国ではお墓を建てるという行為そのものが存在しないこともあります。
例えば、国民の9割以上が仏教徒であるタイでも、火葬後は海や川への散骨が主流で、お墓という形でご遺骨を残すことはありません。
お墓を建てるか否かは個人の自由であるにもかかわらず、日本人の多くがお墓を求めるのは、「ご遺骨を埋葬する場所」という物理的な役割以上に、日本独特の風習と考え方にもとづく精神的な役割があるからです。
日本独特のお墓の精神的な役割
日本には年に2回、「春分の日」と「秋分の日」をそれぞれ中日とする前後7日間の「お彼岸」に、お墓参りをする風習があります。そもそも、彼岸とは仏教用語で「この世から見た向こう岸」、つまり極楽浄土や煩悩を脱してたどり着く悟りの境地を指す言葉です。お彼岸にお墓参りをするようになったのは、そうした仏教用語の持つ意味合いと、日本人の心に根づいた先祖供養の精神が結びついたからだと考えられます。
こうした事情を背景に、日本人にとってのお墓は、下記に挙げるような精神的な役割を持つようになりました。
お墓を通じて故人をしのぶ
「亡くなった方の魂が宿る」とされるお墓は、残された方が故人を想い、その冥福を祈るためのシンボル的な存在です。次第に薄らぐ「故人と過ごした記憶」を確かめ、つながりを確認できる心の拠り所として、ご遺族を支えています。
家族のきずなを再確認する
お墓参りは、ともにお参りをする家族との関係を見つめ直し、自分の命が大切に受け継がれてきたものであることを再確認する機会でもあります。最近では、家族が先祖を重んじる姿勢を子供たちに見せることが、情操教育に役立つとしてお墓参りという文化が見直されています。
ご遺族が気持ちを整理できる
大切な方を失ったという喪失感は、簡単に癒えるものではありません。故人を身近に感じられるお墓に手を合わせ、出来事を報告したり悩みを相談したりすることで、ご遺族は少しずつ気持ちを整理し、その死を受け入れることができるようになるのです。
お墓事情の移り変わり
日本において、亡くなった方を「埋葬する」という習慣が生まれたのは縄文時代だといわれています。ただし、当時はご遺体を土の中に埋めるのみで、上に建造物を作るという文化はありませんでした。時代は移り、古墳時代に入って、地位の高い方や権力者のお墓として古墳が建てられるようになります。江戸時代の中期には現在のような石のお墓が登場しますが、あくまでも武士など限られた階級の方のための物であり、一般庶民は埋葬したご遺体の上に、こんもりと土を盛る程度でした。
現在のお墓の形が定着したのは、火葬が浸透した大正時代以降、少しずつ霊園や墓地が作られるようになってからです。さらに、昭和30年代の高度経済成長期になると、地位や権力に関係なく、庶民でも気軽にお墓を建てられるようになりました。進学や就職で故郷を離れ、都市部で家族を持った方が、地元にある代々継承しているお墓とは別に、自分のお墓を建てるようになったのもこのころです。「お墓を建てるのが当然」という時代が到来し、全国に多数のお墓が作られていったのです。しかし、価値観の多様化や少子高齢化を背景として、現代のお墓事情は少しずつ変化しています。
お墓の無縁化
少子高齢化や核家族化が進み、「ふるさとに代々継承しているお墓があるが、遠方に住んでいてなかなか手入れができない」「夫婦二人で承継者がいないため、お墓を守ってくれる人がいない」というケースが増加しています。また、長男や長女が家を継ぎ、家名を継承していくという「家制度」も、家への帰属意識の変化に伴い現代では、絶対的なものではなくなりました。お参りする方が途絶えたお墓は荒れてしまうので、いずれは墓地を管理する寺院や自治体が、「無縁墓」として撤去するしかありません。
無縁墓になるのを防ぐ手段として、生前にお墓を撤去して更地に戻す「墓じまい」や、最初に一括して支払うことでご遺族に代わって供養をする「永代供養」、墓じまいを済ませた後で、現在の自宅から近いところに引っ越しをする「改葬」といったサービスも生まれています。
多様化するお墓の種類
最近では、従来の形にとらわれない、しきたりで選ぶのではなく、家族や個人の考え方にマッチしたお墓選びが増えています。多様化するお墓の種類について、代表的なものを見ていきましょう。
一般墓(代々墓、家墓)
一般墓は、「お墓」といわれて最初にイメージする、昔ながらのスタンダードなお墓です。家族や親戚といった「一族」単位で利用し、長男・長女が代々受け継いで管理します。墓石には「◯◯家」「◯◯家之墓」など家名が彫られていることが多く、単に「先祖代々之墓」というお墓も少なくありません。一般墓の形には、和型、洋型、デザイン墓石という下記の3つがあります。
〈和型〉
和型の原型は仏舎利塔であるといわれ、複数の部位を組み合わせてできています。一般的には、ご遺骨を納める空間である「カロート」を保護しながら、花立や水鉢を置く「下台」(芝台)の上に、お墓を建てた日時などを刻む「中台」「上台」が重なり、最後に家名を刻んだ縦長の「竿石(さおいし)」が置かれる形です。
〈洋型〉
洋型の基本的な造りは和型と同じですが、全体的に横長で背が低いのが特徴です。和型との大きな違いは、竿石に刻む文字に決まりがなく、好きな言葉を選べるという点です。二文字で「感謝」「永遠」、一文字で「祈」「絆」などが多く見られますが、「ありがとう」「いつも一緒」といったメッセージを彫ることも可能です。
〈デザイン墓石〉
和型でも洋型でもなく、お墓を建てる方の希望に沿って自由にデザインできる墓石もあります。既存の墓石にアレンジを加えて個性を出すことはもちろん、サッカーボールや楽器など、故人が好きだった物をかたどった墓石を作ることもできます。
樹木葬
樹木葬は、近年増加している、墓石の代わりに樹木や草木をシンボルとするお墓です。従来のお墓に比べて安価であることや、宗教を問わず承継者も不要であることから、「跡継ぎがいないので、自分のお墓を永代にわたって管理してほしい」「経済的に困窮していて、一般墓を建てるのが難しい」「自分のお墓のことで、子や孫に迷惑をかけたくない」といった方に向いています。
樹木葬の埋葬方法には、全員分のご遺骨を1ヵ所に埋葬する「合祀(ごうし)」、ご遺骨を一人分ずつ袋や骨壺に分けて埋葬する「共同埋葬」、完全に独立した区画を設けて一人ずつ埋葬する「個別埋葬」があります。また、埋葬する場所は、大きく下記の2つに分けられます
〈里山型〉
里山型は、山林の木々からシンボルツリーを選び、その根元に埋葬するタイプです。故人の好きだった木を植樹する場合もあります。最終的には完全に自然に還るため、埋葬した場所がわかるよう、ネームプレートなどを置いて目印にします。
〈公園型〉
霊園内に設けられた「樹木葬エリア」にシンボルツリーを植え、その根元に埋葬するタイプが公園型です。霊園の充実した管理体制と行き届いた環境整備のもと、自然に還るという樹木葬のメリットを享受できる点が魅力です。
納骨堂
納骨堂は、骨壺に納めたご遺骨をそのまま収蔵する納骨スペースです。元々は、お墓を建てるまでのあいだだけご遺骨を預かる建物を納骨堂と呼んでいましたが、都市部の墓地用地の不足に伴って、新しいお墓のスタイルとして活用されるようになりました。承継者がいない方でも利用できるように、あらかじめ定められた安置期間を過ぎたご遺骨は、永代供養墓に合祀されることがほとんどです。
納骨堂の最大のメリットは、室内型のため天候に左右されずにお参りできることや、掃除や草むしりなどの管理が不要であることです。また、駅からのアクセスが良い場所が多いため、遠方で管理が難しいお墓を墓じまいして、近くの納骨堂に改葬するケースも増えています。
納骨堂の種類は、箱型の収蔵スペースが積み重なって棚を形成している「ロッカー型」、室内に一般墓を並べた「墓石型」、上に位牌、下にご遺骨を納める仏壇タイプの納骨檀が横に並んだ「仏壇型」に分けられます。
自動搬送式納骨堂
都市部を中心に建設が進められている納骨堂の中でも、少ないスペースにたくさんのご遺骨を安置できるとして注目を集めているのが自動搬送式納骨堂です。自動搬送式は機械式とも呼ばれ、専用のICカードをかざすと、参拝者が待つ参拝スペースまでご遺骨が入った「厨子(ずし)」が自動的に運ばれてきます。
参拝スペースには一般墓と同じ墓石が設置されていますので、近代的でありながら従来のお墓参りの良さが感じられる点も人気です。供花やお焼香などは参拝スペースに用意されているので、仕事帰りや気が向いたときに気軽に立ち寄ることができます。
永代供養墓
永代供養墓は、お墓を承継する方がいない場合、墓地を管理する寺院や霊園が永代にわたって供養や管理を代行してくれるお墓です。自分だけ、もしくは夫婦だけなど限られた単位でお墓に入りたい方や、単身者、ご遺族に経済的な負担をかけたくない方などに選ばれる傾向があり、家族関係の変化や非婚率の増加が背景にあると考えられます。永代供養墓の埋葬方法は、下記の4つがあります。
・合祀(合同墓)
合祀は、1つのスペースに、全員分のご遺骨をまとめて安置します。永代供養墓の中でも特に安価ですが、一度埋葬したご遺骨は取り出すことができません。「やっぱりお墓を建てたい」「改葬したい」という事態を想定し、慎重に判断する必要があります。
・個別安置型
個別安置型は、一般墓と同様にお墓を建て、あらかじめ決められた期間が過ぎたら合祀の永代供養墓に移します。安置期間は寺院や霊園によって異なりますが、33回忌までとしているところが最も多いようです。
・一般墓+永代供養
一般墓に永代供養をプラスしたタイプのものもあります。承継者がいなくなってもご遺骨とお墓はそのままで、管理と供養だけを寺院や霊園が代行します。
・集合安置型
集合安置型は、ご遺骨を埋葬する場所は1つですが、個別に骨壺を用意して、石碑、石塔などを建てます。合祀と違ってご遺骨が分かれているので、将来的には改葬や分骨も可能です。
散骨
「お墓を作ることで家族に負担をかけたくない」「命をまっとうしたら、自然に還りたい」という方に選ばれている供養方法として、お墓という形を一切残さない海や山への散骨があります。
「ご遺骨であることがわからないようパウダー状にする」「他人の所有する土地にはまかない」といった基本的なルールを守って行えば法律違反にはならないとされていますが、北海道長沼町・七飯町・岩見沢市、長野県諏訪市、埼玉県本庄市・秩父市、静岡県御殿場市など、条例で散骨を禁じている地方自治体もありますので注意が必要です。
知っておきたい墓地の管理運営主体と特徴
墓地の管理運営主体には、市町村などの公共団体のほか、宗教法人、公益法人の3つがあります。厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」(2000年12月)では、「墓地経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られること」としています。つまり、墓地の管理経営主体となれるのは、この3つだけなのです。民間企業などが営利目的で霊園を運営したり、個人で霊園を作ったりすることはできません。
なお、管理運営主体は、墓地の種類によって異なります。また、場合によっては、実質的な管理運営を別の法人に委託していることがあります。経営法人と管理・運営を担う法人、2つの法人名が資料に記載されていることがあるのはそのためです。それでは、管理運営主体別に墓地の特徴についてご紹介しましょう。
公営霊園(公営墓地)
公営霊園は、都道府県や市町村などが管理運営主体となる墓地のことです。地方自治体が管理経営を担っているという安心感から、募集がかかると応募が殺到して抽選になることも珍しくありません。公平性と平等性の観点から、宗旨・宗派はもちろん、石材業者も自由です。
ただし、公営霊園に入るには、下記のような条件をいくつかクリアする必要があります。
〈公営霊園に入るための条件〉
・当該自治体に居住していること
・自治体が定める居住年数を満たしていること
・自治体が定めた期間中に申込みを済ませること
・手元にご遺骨があること
民営霊園(公営墓地)
民営霊園は、財団法人や宗教法人などが管理運営主体となっている墓地です。公営霊園のように居住地などの縛りがなく、基本的に誰にでも広く開かれた霊園だといえるでしょう。公営霊園では区画の広さや墓石の大きさ・デザインに制限がありますが、民営霊園はこうした点も比較的自由です。四季折々の花が楽しめるガーデニング墓地やテラス風墓地、芝生墓所など特徴的な霊園も多く、購入する方の意向に合わせて選べるのが魅力。なお、民営霊園は、生前購入も可能です。
寺院墓地
寺院墓地は、お寺が管理運営主体となる墓地です。寺院墓地の購入を希望する場合、そのお寺の檀家になり、教えに従うのが一般的です。檀家になれば末代まで手厚く供養してもらえるほか、法要もお任せすることができますが、入檀料に加えて護持会費やお布施などが必要となります。ほかの霊園や墓地に比べて、墓地購入にかかる費用が割高になる可能性があります。
希望を実現するための、お墓探しから完成までの流れ
実際に、お墓を探し始めてから完成するまでには、どのくらいの期間が必要になるのでしょうか。亡くなってからお墓を探す場合、「四十九日まで」「一周忌まで」といった区切りで探すことが多いようですが、生前購入の場合は、納得がいくまでじっくり準備をすることができます。
ここでは、一般墓を想定して、お墓づくりに必要な工程を見ていきましょう。
情報収集し、家族で話し合う
まずは、どんなお墓にしたいのかを考えましょう。その際には自分一人で決定せず、家族や親族とも話し合い、全員が納得できるお墓のイメージを固めることが大切です。
墓地・霊園を探し、現地を見学する
お墓のイメージが固まったら、墓地・霊園探しです。お墓の種類だけでなく、先々のお墓参りまで見据えて、自宅からのルートや管理体制などもチェックしましょう。車でお参りする場合も、何らかの事情で運転できなくなったり、お盆やお彼岸で駐車場が混み合ったりすることも考えて、駅からのアクセスも見ておく必要があります。候補となる霊園を選んだら、必ず足を運んで現地を確認してください。
周辺環境を確認する
お墓の周辺環境も、しっかり確認しましょう。日当たりが悪い、周辺施設から騒音が聞こえるといった環境では、落ち着いてお参りをすることができません。また、昨今はどこに墓地・霊園があるのか地域性を考慮することも大切になってきています。
お墓に眠る故人のためにも、環境を含めてお墓を選ぶことが大切です。
管理状況を確認する
法要施設や事務所など、お墓参りのときに利用する施設を含めて、霊園全体が気持ち良く清潔に保たれているかどうかは、必ずチェックしておきたいポイントです。供花やお線香が霊園にて入手可能か、水を汲む場所がお墓の近くにあるかといった点を確認しておくと安心です。
費用・価格を確認する
お墓を建てるには、「永代使用料」「管理料」「墓石代」がかかります。中でも、管理料は継続的に発生する費用なので、金額を確認し、支払いに無理がないか冷静に判断しましょう。
自分に合った石材店を選ぶ
お墓づくりは、石材店との二人三脚です。お墓の種類を選ぶときと同様、金額はもちろんですが、対応も見極めのポイントのひとつです。イメージを共有し、最善を尽くしてくれる石材店を選ぶことが大切です。なお、全国優良石材店の会が実施したアンケートによると、墓石購入の参考価格は下記のとおりです。
〈墓石購入の参考価格〉
和型:183万6,000円
洋型:157万2,000円
デザイン墓:184万円
出典:一般社団法人全国優良石材店の会「2022年版 全優石お墓購入者アンケート調査」(2022年8月)
予約・購入
希望どおりのお墓を実現できる場所が見つかったら、区画の予約をし、購入します。
石の据付・引き渡し
基礎工事を経て外柵の設置が終わったら、いよいよ石の据付です。墓碑、灯篭、墓誌などを設置して、引き渡しとなります。お墓探しから完成までのこの期間を約2~3ヵ月と考えておきましょう。
お墓は価値観に合わせて選ぶ時代
「終活」の浸透によって、自分のお墓、夫婦のお墓、家族のお墓について、元気なうちから考える方が増えています。生きているうちにお墓を建てる「寿陵(じゅりょう)」(生前墓)も珍しいことではなくなりました。お墓の種類も昔に比べて飛躍的に増え、時代はまさに「決められたお墓に入る時代」から「価値観に合わせてお墓を選ぶ時代」に移りつつあるといえるでしょう。お墓選びは一生に一度の大きなイベントです。焦らず、妥協せず、満足できるお墓選びをしてください。その上で、何かわからないことや疑問に思うことなどがありましたら、お気軽にご相談ください。あなたに合ったお墓選びのお手伝いをいたします。