理想のお墓の選び方とは?押さえておきたい基礎知識
理想のお墓の選び方とは?押さえておきたい基礎知識
お墓を選ぶことは、ほとんどの方にとって一生に一度あるかないかの経験です。従来の一般墓以外に様々なお墓の選択肢が登場している今、何を基準に選べばいいのか、どうすれば後悔のないお墓選びができるのか、悩んでいる方も多いでしょう。
ここでは、お墓の種類やそれぞれのメリット・デメリットのほか、かかる費用など、自分や故人にとって最適なお墓を選ぶために、知っておきたい基礎知識について解説します。
目次
▶ お墓を選ぶ前に知っておきたいポイント
▶ 代表的なお墓の種類
▶ お墓の種類ごとのメリット
▶ お墓の種類ごとのデメリット
▶ 向いているお墓のタイプを紹介
▶ お墓の種類別の費用感
▶ お墓選びの際は、条件に優先順位をつけて
お墓を選ぶ前に知っておきたいポイント
まずは、お墓を選ぶにあたって、事前に把握しておきたいポイントについて整理しましょう。
お墓の種類
従来のお墓は、縦長の和型墓石に「先祖代々の墓」、「◯◯家之墓」といった彫刻を施した、代々墓と呼ばれる形式が一般的でした。しかし、家族構成の変化や価値観の多様化に伴って、お墓の種類は増加しています。
自分と家族にとって最善の“お墓のかたち”を知るために、お墓の種類や特徴を知り、メリット・デメリットを比較することが大切です。
お墓にかかる費用
お墓を建て、維持と管理をしていくために必要な費用は、基本的に次の3つがあります。
・永代使用料
お墓を建てるには、墓地用地を永代にわたって使用する「使用権」を霊園や寺院から購入する必要があります。永代使用料は、その権利を買うための費用です。所有権ではないため注意しましょう。
・管理料
管理料とは、管理棟の整備や墓地内の清掃、植栽の手入れ、墓地の水道代など、お墓周りの環境を維持・管理するための費用です。毎年決まった額を支払うか、2~3年ごとにまとめて支払うことが一般的です。
・墓石代
墓石代とは、お墓本体を構成する竿石(一番上に設置された目印となる石)、カロート(ご遺骨を置く納骨室)、花立、香炉、外柵などの費用のほか、工事費が含まれます。
近年は、お墓の種類が増えたことで、お墓にかかる費用に差が生まれました。墓石がプレート型で小さい物や、墓石の代わりにシンボルツリーを植える樹木葬、屋内に骨壺のままご遺骨を収蔵する納骨堂の場合、従来に比べて墓石代の部分がかなり低く抑えられます。
また、永代供養つきのお墓では、管理料が不要なところもありますので、ご予算や後継者の有無によって選ぶといいでしょう。
お墓の継承者の有無
昔ながらの日本のお墓は、明治時代の家制度にもとづく考え方を基本とし、長男とその家族が代々受け継いで維持管理するものとされてきました。離婚や死別で本家に戻ってきたり、生涯独身であったりする場合を除いて、長男以外の兄弟は分家して新しい代々墓をつくり、姉妹は嫁ぎ先のお墓に入ります。
しかし、少子高齢化や核家族化が進むにつれ、継承者がいることを前提としたお墓の在り方は、前時代的なものになりつつあります。ニーズの変化を受けて、永代供養墓や樹木葬といった継承者がいなくても購入できるお墓が数多く生まれており、継承者の有無はお墓選びの大切なポイントのひとつだといえるでしょう。
継承してくれる子供や孫はいるものの、「負担をかけたくない」という思いから継承を前提としないお墓を選ぶ方も増えています。
お墓に求めるもの
お墓に何を求めるかは、人によって様々です。人生の岐路に立たされたとき、うれしい報告があるとき、お墓参りをしてご先祖様や大切な故人に話しかけることで気持ちを整理している方もいます。そのような方にとって、お墓は単なるご遺骨の埋蔵場所ではなく、心の拠り所であり、一般墓のようにかたちとしてしっかり存在していることを重視する傾向があります。
一方、こまめにお墓参りをしたくても、遠方だったり体が不自由だったりしてなかなか足を運べない方は、お墓のかたちより管理の手間がかからないこと、天候に左右されずにお参りできることのほうが重要かもしれません。
「伝統を壊したくない」、「いつでも手を合わせられるようなかたちをしっかり残したい」、「維持管理をしっかり代行してほしい」など、お墓に求めるものを明確にしてからお墓選びをスタートしましょう。
代表的なお墓の種類
現代では、お墓といっても様々な種類があります。続いては、代表的なお墓の種類ごとに、その特徴をご紹介しましょう。
一般墓
一般墓は、いわゆる「家」単位で継承していく従来型のお墓で、「代々墓」などとも呼ばれます。
寺院や霊園などから墓地の使用権を購入し、家族の名前を刻んだ石碑を建立して、長男を中心に家族、血縁者で維持管理していきます。
樹木葬
墓石の代わりにシンボルツリーを植える樹木葬は、時代にマッチしたお墓のかたちとして、近年非常に人気が高まっている埋蔵方法です。
2006年には公営霊園として初の樹木葬が「横浜市営墓地メモリアルグリーン」にオープンしました。2012年には東京都東村山市の「都立小平霊園」で都立霊園としては初となる「樹林墓地」の募集が開始され、多くの応募があり話題を集めました。以降、墓域の一角を樹木葬の区域とする民営霊園や寺院墓地が増え、各地に広がっています。樹木葬は、次の4つのタイプに分けられます。
合祀型:1つのシンボルツリーのもとに複数のご遺骨をまとめて埋蔵するもの
集合型:シンボルツリーは1つでもスペースは別々に設けられているもの
個別型:ご遺骨ごともしくは家族ごとに別々のシンボルツリーと埋蔵場所を設けているもの
里山型:自然のままの里山に埋蔵するもの
納骨堂
納骨堂は、元々はお墓を建てるまでの間だけ、ご遺骨を一時的に預かる目的で建てられた施設でした。都市部の墓地用地が不足するにつれ、現在ではご遺骨を恒久的に収蔵する新しいお墓のかたちとして活用されるようになっています。
収蔵期間は3回忌、13回忌、または33回忌を中心に一定の期限があり、期限を過ぎた後は永代供養墓などに改葬されます。
納骨堂は、現代のライフスタイルに合ったお墓として急速に増えており、年々注目が高まっています。
特に、墓地用地の確保が難しい東京都内では納骨堂のニーズが高く、生前予約する方も少なくありません。寺院や公営・民営の霊園でも運営していますが、希望者は多く、抽選になるケースも見受けられます。納骨堂の種類は、下記の4タイプに分けられます。
・ロッカー型:正方形に近い箱型の収蔵スペースが積み重なったもの
・墓石型:室内に一般墓を建てて、ご遺骨を収蔵するもの
・仏壇型:下にご遺骨、上にお位牌を収めるもの
・自動搬送式:専用のICカードをかざすと、ご遺骨が入った厨子が参拝スペースに運ばれてくるもの
永代供養墓
永代供養墓は、墓地を管理する寺院や霊園が、永代にわたって供養や管理を代行してくれる、継承者を必要としないお墓です。
永代供養墓には、次のような種類があります。
・合祀型(合同墓):1つのスペースに、ほかの方のご遺骨とすべていっしょに埋蔵する方法
・集合安置型:石碑や石塔などのモニュメントを建てて、その下に個別の骨壺に納めたご遺骨を1つのスペースに埋蔵する方法
・個別安置型:一般墓と同じようにお墓を建て、一定の安置期間が過ぎたら合祀の永代供養墓に移す方法
・永代供養つき一般墓:一般墓の継承者がいなくなったら、ご遺骨とお墓の管理・供養を寺院や霊園が引き継ぐ方法
散骨
散骨は、お墓としてのかたちを残さず、パウダー状にしたご遺骨を海や山にまく埋蔵方法です。
条例で散骨を禁じている自治体や、自宅近辺や生活圏内にまかれると困る方もいますので、事前に確認が必要です。
お墓の種類ごとのメリット
お墓は長くつき合っていくものだからこそ、その特徴をしっかり押さえておくことが大切です。続いては、お墓の種類ごとに、それぞれのメリットを見ていきましょう。
一般墓のメリット
大正時代以降に庶民にも定着した、墓石のある一般墓のメリットをご紹介します。
・家族などの賛同を得やすい
一般墓は、長年培われてきたお墓のイメージそのままなので、家族や血縁者の賛同を得やすい埋蔵方法です。
「家」にこだわりがある世代の方や、そうした価値観の中で育ってきた方は、「◯◯家之墓」という家名を刻んだ墓石を建てることを重視し、新しいお墓のかたちを敬遠する傾向があります。一般墓は、家族の象徴を墓石として残せる伝統的なお墓のかたちといえるでしょう。
・精神的な拠り所になる
墓石というかたちがあることで、残された方がお参りするたびに、故人との心のつながりを感じられるという精神的なメリットもあります。
墓石や墓域の清掃、植栽の手入れなどについても、それを故人との対話の時間と捉える方であれば、メリットのひとつといえるでしょう。
樹木葬のメリット
樹木葬は、お墓のかたちが石から樹木に変わったものです。昨今人気が高まっている、樹木葬のメリットは下記の通りです。
・継承者が必要ない
合祀型、集合型、個別型、里山型のいずれも、樹木葬は継承を前提としていません。維持管理を霊園や寺院に任せられますので、単身者や夫婦2人でも購入できることが大きなメリットです。
・自然に近い埋蔵方法ながら安心感がある
樹木葬は、自然に還るという点では散骨に近いものがありますが、墓地として認められた場所に埋蔵するため、散骨のように別途、自治体などの了解を得る必要がなく、周辺住民とトラブルになる可能性もありません。
・比較的安価である
樹木葬は、墓標代わりのシンボルツリーのみで墓石がない、またはあってもプレート型などで小さいため、一般墓に比べて安価であることがメリットとして挙げられます。
永代供養墓のメリット
永代供養墓の需要は、家族構成の変化や非婚率の増加に伴って、着実に高まっています。今では、多くの民営霊園や寺院墓地が、永代供養を取り入れるようになりました。
契約時に一括で費用を支払うことで、年間管理料といったコストがかからない点も広く支持されています。人気が高まっている永代供養墓のメリットを見ていきましょう。
・継承者も管理も必要ない
永代供養墓は、家族に代わって寺院や霊園が責任を持って維持管理してくれるお墓です。子供や孫が遠方に住んでいてなかなかお参りできない場合や、継承者がいない場合でも、お墓が常にきれいに保たれているという点で大きな安心感があります。
・生前申込みができる
永代供養墓は生前申込みができ、契約時に支払いが完了するので、「死後、残された家族に迷惑をかけたくない」「継承者がいないので、すべての手続きを終わらせたい」といった希望を叶えることができます。
・費用が抑えられる
永代供養墓は、個人墓に永代供養代がプラスされたもの以外は、墓石代がかからないか、かかっても少しで済みます。契約時の支払いが終われば、管理費を求められることもありません。
納骨堂のメリット
納骨堂は屋内施設にあるため、一般墓や樹木葬など、屋外のお墓とは異なるメリットがあります。
・個人、夫婦など、様々な分け方でご遺骨を収蔵できる
納骨堂は、個人、夫婦のみ、友人同士など、様々な分け方でご遺骨を収蔵することができます。
なお、収蔵は納骨堂に焼骨を収めることで、埋蔵は墓地に焼骨を埋めることとして区別しています。その理由は、「墓地、埋蔵等に関する法律」にて、「納骨堂とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう」という納骨堂の定義が定められているからです。
・管理の手間がかからない
納骨堂は屋内にあるため、植栽の手入れや墓石の清掃、墓域の草むしりといった管理の手間がかかりません。参拝スペースは、管理者によってきれいに保たれています。
・バリアフリーでお参りしやすい
都心部の納骨堂は、ビル型でエレベーターが完備されており、バリアフリー化が徹底されています。高齢の方や体が不自由な方でも、無理なくお参りすることが可能です。
・交通アクセスが良く、天候も気にせず気軽にお参りできる
納骨堂は、駅やバス停からすぐにアクセスできる施設が多く、公共交通機関を使って気軽にお参りができます。また、屋内型施設のため、天候や気候を気にしなくていいこともうれしいポイントです。
・継承を前提としていない
納骨堂は、一定の期間を過ぎると合祀墓での供養となります。継承を前提としていないため、無縁墓になる心配はありません。
散骨のメリット
有名人の遺言などでも徐々に広まってきた散骨。海や山など自然が好きな方の間で人気の高い、散骨のメリットを見ていきましょう。
・自然に還れる
散骨の一番のメリットは、なんといっても自然の中にご遺骨を還せること。海や山が好きで、死後はその一部になりたいと故人が願っていた場合、その遺志を尊重し、実現してあげることができます。
・継承の必要がない
ご遺骨を自然の中にまく散骨は、当然ながらかたちとしてのお墓は残りません。したがって、継承も不要です。
・費用の負担が少ない
散骨にかかる費用は、ご遺骨をパウダー状にする粉骨費用と、散骨場所までの交通費、海での散骨のために船を借りる費用などです。墓地用地を必要とせず、管理費などもかからないため、一般墓に比べるとかなり安価です。
お墓の種類ごとのデメリット
お墓を購入してから後悔しないためには、メリットと合わせてデメリットもきちんとチェックしておきましょう。
一般墓のデメリット
これまでは、お墓といえば一般墓でした。お墓参りの掃除やお供え物の管理、墓石の手入れなどを行ったことがある方が多いため、管理の大変さを思い浮かべやすいかもしれません。維持管理の大変さに加え、新しいお墓のかたちの登場により見えてきた一般墓のデメリットを紹介します。
・継承者が必要
一般墓は、継承者がいることを前提としています。しかし、少子高齢化や晩婚化、未婚率の上昇などにより、以前のように、長男が家と墓を継ぐことが不可能であったり、途中で家名が絶えてしまったりすることは少なくありません。
家族や親族による維持管理ができなくなった一般墓は、荒れ始めたり、管理費の滞納が続いたりしたことをきっかけに縁故者に通知され、1年経っても継承の申し出がない場合、無縁墓と認定されます。
無縁墓は、管理者の手で解体撤去されて更地になり、ほかの無縁仏とともに合祀されることになります。
・費用が高い
墓石そのものの費用をはじめ、工事費用、ランニングコストになる管理費、供養の際に寺院に支払うお布施など、比較的費用面の負担が大きいことも、一般墓のデメリットとして挙げられます。
樹木葬のデメリット
樹木葬は、自然に還るというメリットがある反面、骨壺から取り出してご遺骨をシンボルツリーのもとに埋蔵するため、後から取り出すことができなくなります。樹木葬という言葉のイメージだけでなく、デメリットもしっかり見ていきましょう。
・血縁者の理解が得られない可能性がある
樹木葬はまだ新しい埋蔵方法であり、伝統的な一般墓を望む方からは反対される可能性があります。理解を得るために何度も話し合いをしたり、説明をしたりしても同意が得られない場合、最終的に親族間・兄弟間のトラブルに発展して、ご遺骨の行き場がなかなか決まらない事態も考えられます。
・個別のお墓参りができないことがある
1つのシンボルツリーのもとに、複数のご遺骨をまとめて埋蔵する合祀型の樹木葬の場合、お墓参りはシンボルツリーか、別に設けられた祭壇などで手を合わせることになります。不特定多数の墓碑に手を合わせる形式のため、故人にお参りできている感覚が薄いかもしれません。故人が好きだったお花やお酒、食べ物などをお供えしたり、ゆっくり故人と語らったりすることはできないため、個別にしっかりお参りしたいという方には不向きです。
・改葬できない場合がある
ご遺骨をまとめて1つの場所に埋蔵する合祀型や、土に還す里山型の樹木葬は、後々改葬を望んでも叶えられない場合があります。「継承者はいるが迷惑をかけたくない」といった理由でみずから生前申込みをする際には、お参りしてくれる家族や親族の意向をよく聞き、改葬の可能性を考えた上で決断することが重要です。
納骨堂のデメリット
納骨堂は、屋内施設で気軽にお参りできるようになりますが、墓石のあるお墓とは異なり、お参り方法に制限がつくことが多いです。お参りをするたびに後悔しないよう、納骨堂のデメリットを見ていきましょう。
・親族の理解を得にくい
樹木葬と同様、納骨堂も近年登場した新しいお墓のかたちであり、一般墓を望む方にはなかなか受け入れ難いところがあります。特に、コインロッカーのように並んだ納骨堂のロッカー型は無機質に感じて、抵抗感を持つ方もいるでしょう。納骨堂を選ぶ目的とメリットをよく説明し、理解してもらう必要があります。
とはいえ、最近では高齢の方でも、納骨堂の利便性に魅力を感じて契約するケースが増えており、世の中の意識は少しずつ変わってきているといえそうです。
・お供え物に制限がある
屋外のお墓であれば、故人の好きだった物を備えてお線香をあげるという伝統的なお墓参りができますが、屋内の納骨堂では火気厳禁で、お線香をあげることができなかったり、お供え物に制限があったりする場合があります。納骨堂自体の決まりがありますので、事前に確認しましょう。
・費用がそれなりにかかる
納骨堂のタイプにもよりますが、施設が近代的で充実している自動搬送式納骨堂などは、それなりに費用がかかります。費用を抑えたいのであれば、ご遺骨を収蔵するのみの、シンプルな形式のものを選ぶといいでしょう。
・3密を避けづらい
自動搬送式の納骨堂は駅近のところが多く、ターミナル駅までアクセスしなくてはいけないため、コロナ禍ではお参りを自粛せざるをえない場合があります。また、お参りブースが換気されている納骨堂はまだ少ないため、3密を避けづらい場面があるかもしれません。
永代供養墓のデメリット
永代供養墓は管理に手間がかからない反面、一般的なお墓参りでできることが難しくなります。デメリットをしっかり把握して、親族間でのトラブルを回避しましょう。
・合祀後は遺骨が取り出せない
永代供養墓は、納骨から一定の期間が経つと、ほかの方のご遺骨とともに合祀墓に移されます。合祀された後は、ご遺骨を取り出すことができません。そのため、新しく建てた家の墓に故人のご遺骨を移そうと思っても、改葬することができないのです。
・親族の理解を得にくい
最終的に合祀される永代供養墓は、個別のお墓がなくなることに抵抗を感じる方は少なくありません。先祖代々の墓を守ることに意義を感じている方などには、時間をかけて意思を伝えましょう。
・個別のお参りがしにくい
永代供養の期限が切れて合祀した後は、個別のお参りがしにくくなります。故人の好きだったお花や食べ物、飲み物などをお供えしたいというときは、全体の献花台などに供えることが可能かどうか、事前に調べておいたほうがいいでしょう。
散骨のデメリット
散骨は、お墓をつくるわけではないため、取り返しがつかなくならないようにすることが大切です。「ご遺骨であることがわからないようパウダー状にする」、「他人の所有する土地にはまかない」といった、基本的なルールを守らなくてはなりません。トラブルにならないためにも、デメリットをしっかり見ていきましょう。
・ご遺骨が残らない
散骨は、ご遺骨をパウダー状にしてまく埋蔵方法であり、後にかたちが残りません。故人との心のつながり、自身の心の拠り所を求める方の中には、ご遺骨の一部をペンダントなどにいれて身につけたり、小さな骨壺におさめて自宅に置いたりする手元供養という方法を選ぶ方もいます。
・トラブルになる可能性がある
お墓というかたちがないため、故人に手を合わせる場所がほしい親族からは「お参りできないので成仏できないのではないか」、「お墓を建てるお金が惜しいのか」といった反発を受ける可能性があります。菩提寺との関係が悪化して供養に支障が出る場合もあるので、事前にきちんと説明して納得してもらうか、反発覚悟で故人の遺志を尊重するか、決断が求められます。
・散骨の範囲が限られる
散骨自体は違法ではありませんが、マナーの観点から、散骨できる場所は限られます。例えば、漁場や第三者の住宅の近くは、そこで仕事をしたり暮らしたりする方の感情を害する可能性があるため、避けましょう。
向いているお墓のタイプを紹介
石材業界における唯一の経済産業省公認団体「全国石製品協同組合」が実施した「このお墓の種類を選んだ理由について」(2020年2月)というアンケート調査によると、調査対象者全体の88.2%の方が一般墓を選び、その多くが「故人の供養のため」、「自分自身と家族の心の拠り所」という理由を挙げています。
この結果より、以前に比べて減少傾向にあるにせよ、今なお日本人の多くが「お墓」と聞いて思い描くのは一般墓であることや、お墓に故人の魂とつながる場所としての価値を求めていることがわかります。
続いては、お墓の種類別に、どのような方が向いているかを見ていきましょう。
<一般墓に向いている方>
・昔ながらの伝統や宗教的な価値観を重んじ、手厚い供養がしたい方
・継承者がいる方
・継承者から、維持管理について同意が得られている方
・予算に余裕がある方
<樹木葬に向いている方>
・「自然に還りたい」、「大好きな花に囲まれて眠りたい」という方
・できるだけ費用を抑えたい方
・継承者がいない方
・継承者はいるが、お参りや清掃などの体の負担、管理費などの経済的な負担をかけたくない方
<納骨堂に向いている方>
・忙しくてなかなかお墓参りに行けない方
・仕事帰りの空いた時間に、ふらりとお参りに行きたい方
・自家用車がない、年をとって運転に不安があるなど、公共交通機関でお参りに行きたい方
・家に縛られることなく、自分らしい収蔵を望む方
・お墓の清掃など、管理に時間をかけられない方
<永代供養墓に向いている方>
・単身者など、継承者がいない方
・一定の期限が過ぎた後に合祀されることに抵抗がない方
・後々、改葬する予定がない方
・一般墓より費用を抑えたい方
・家族単位でなく、「自分だけ」、「夫婦だけ」など、限られた単位でお墓に入りたい方
・残された家族に負担をかけたくない方
<散骨に向いている方>
・費用の負担をできる限り軽くしたい方
・従来のお墓の在り方に疑問があり、お墓の継承を子供や孫にしいたくない方
・自分らしく埋蔵してほしい方
・自然に還りたい方
・家族に一切の負担をかけたくない方
お墓の種類別の費用感
最後に、お墓の費用について、種類別に概算金額を確認しておきましょう。
一般墓の費用
一般社団法人全国優良石材店の「2019年版 全優石お墓購入者アンケート調査結果」によると、一般墓にかかる費用の相場は、永代使用料、墓石工事費、管理費を合わせて、約160万円となっています。
場所や墓石の種類・サイズなどによって、費用は異なります。
2019年版 全優石お墓購入者アンケート調査結果
内訳としては、永代使用料は20万~200万円、墓石工事費は100万~300万円、管理費は公営霊園が最も安く年4,000~1万円前後、寺院墓地は年1万円ほど、民営霊園はサービス内容や施設の充実度によって年5,000~1万5,000円前後のところが多いでしょう。
・場所
民営霊園、寺院墓地、公営墓地など、墓地の種類や地域によって土地の価格が異なるため、同じ大きさの墓地でも金額には差があります。
・墓石の種類やサイズ
墓地によっては、墓石を建立できる石材店を指定している場合や、墓石の大きさなどに規定を設けている場合があるため、墓石の種類やデザインは、墓地が決定してから選ぶようにしましょう。
石材の種類や使用する石の量(墓石の大きさ)、加工の方法のほか、文字やイラストなど、彫刻の内容と量によって費用は変動します。
樹木葬の費用
樹木葬にかかる費用は、永代使用料と管理費で、50万~70万円ほどが相場とされています。
ただし、場所やスタイル、収容人数などによって費用感は異なります。
・場所
自然がそのまま残された里山に埋蔵する里山タイプなのか、霊園などの施設の一角に樹木葬区域が設けられているタイプなのかによって費用に違いが出ます。霊園などの施設の一角を使用する場合は管理費がかかるため、高くなることが多いでしょう。
・スタイル
樹木葬には、1ヵ所にご遺骨をまとめて埋蔵する合祀型、1ヵ所に個別の埋蔵スペースを設けた集合型、ご遺骨ごともしくは家族ごとにスペースを設けた個別型があり、合祀型が最も安く個別型が最も高いのが一般的です。
・収容人数
人数が多いほど費用は高くなります。場合によっては、一般墓のほうが安価になることもありますので、費用面を重視して樹木葬を選ぶ場合は、収容人数による金額の違いをしっかり確認しましょう。
納骨堂の費用
納骨堂の費用は、納骨堂を永代にわたって使用するための永代使用料、永代にわたって供養してもらうための永代供養料、管理費から成り立っています。料金の相場は20万~80万円で、自動搬送式納骨堂の料金相場は、80万~120万円となっています。
以下の3つの条件によって変動します。
・立地
駅やバス停から近く、お参りしやすい場所に建つ都心の納骨堂は、立地条件の良さから費用も高めです。
・設備
法要施設、待合室、会食施設など、納骨堂内の設備が充実している場合、管理費が高くなります。
・運営主体
公営や民営、寺院といった、運営主体の違いも費用に影響します。最もリーズナブルなのは公営墓地で、1人用で20万円前後、家族用でも30万~60万円程度です。民営霊園の場合、1人用で50万円程度、家族用で100万円程度のところが多いでしょう。寺院墓地では、10万~100万円ほどと幅があります。
永代供養墓の費用
永代供養墓にかかる費用の目安は、およそ10万~40万円ですが、お墓の種類によってプラスされる料金が大きく異なりますので注意が必要です。
・スタイル
一般墓に永代供養がついた単独墓の場合、永代供養料40万円に加えて墓石料がかかります。
個別の骨壺、もしくは骨袋のまま、1ヵ所に埋蔵する集合墓の場合、永代供養料20万円+彫刻料3万~5万円が平均的な金額です。
1ヵ所に複数人のご遺骨をまとめて埋蔵する合祀墓の場合、永代供養料10万円+彫刻料3万~5万円が平均的な金額です。
・期間
永代供養墓は一定期間が過ぎると合祀されます。そのため、個別埋蔵される期間によって価格は変動します。
・立地
永代供養墓の立地や墓石の大きさによっても相場に幅があります。
散骨の費用
散骨にかかる費用は、ご遺骨をパウダー状に粉砕する粉骨費用と、実際に散骨をする場所まで移動する交通費、船などを借りる場合はその費用です。
費用感は、すべて自分で行うか、一部、もしくは全部の工程を業者に依頼するかによって異なります。
・スタイル
業者に海洋散骨を依頼した場合、単独散骨で20万~30万円、合同散骨で10万~15万円、委託散骨(身内は同行せず、散骨まで業者に依頼する)で5万円前後かかります。
お墓選びの際は、条件に優先順位をつけて
終活ブームで、元気なうちから自分のお墓を探し始める方や、お墓に自分らしさを求める方が増えています。一方で、お墓探しを始めてみたものの、「何を決め手にしたらいいのかわからない」という方も少なくありません。
お墓は種類も多く、立地や運営主体、設備の充実度などによって費用にも差があるため、多角的な視点からじっくり検討することが大切です。まずは、今回ご紹介したように「お墓の種類」、「費用」、「継承の有無」、「お墓に求めるもの」から譲れない条件を絞り込み、お墓の種類ごとのメリットやデメリット、費用の違いなどを参考に、後悔のないお墓選びをしてください。