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「遺言書」で守る家族の『和』

 あなたは「身体的に問題がない」、「約1時間程度の集中力がキープできる」、「字が書ける」この3つが揃って「できること」何を思い浮かべますか? …。「終活」で整えておくべき「相続」のことでこの3つが最低必要な「自筆証書遺言書保管制度」が始まっているのをご存知でしたか?

データで見ると「うちも?」他人事ではない!

「遺言書」で守る家族の『和』

 「相続争いなんて、うちには関係ない。もめるほどお金はないから」と思ってはいませんか?意外にも「相続」でもめるのは、遺産総額が5000万円以下が全体の75パーセント以上も占めているのが現状です。数億円の巨額の相続財産が原因で名門一族がもめる…というのは実際にはあまりありません(5億円を超えると、争いになるのは1パーセント以下)
 相続財産の中で比較的分割しにくい「土地や家屋の不動産」の割合が多いケースは、もめる可能性が高い。ですから「うちは関係ない」と他人事とせずに、少なくとも「情報」だけは押さえておく事をオススメします。

相続争いの火種はどこにでもある

「遺言書」で守る家族の『和』

 前項で触れましたが、土地や家屋は「分けにくい」。それは誰もが察しがつきます。お金であれば、相続人数で割ればいい話です。ですが土地は評価額もありますし、住んでいる人がいる場合は簡単にはいきません。生前に親からもらった財産がある子ども、介護をした、しない子ども…もめる場合によくあるケース。きょうだいの協力なしに一人で親の介護をしたら「他のきょうだいよりもらえて当たりだ」と思うでしょう。学生時代に海外留学させてもらった子どもと、そうでない子どもで「もめた」というケースを聞いた事があります。「あなたは留学させてもらったんだから、私はその分“多くもらう権利”がある」…。親はその子に合った教育として「良かれ」と思って海外に送り出したのに…まさか自身の死後、子どもたちがもめるとはその時は思いもしないでしょう。

 これもドラマで見た事がある、という方も多いでしょう。遺産分割の権利を強く主張する“トラブルメーカー”が出現して「もめる」ケースです。被相続人が亡くなって、遺産分割協議の話し合いがこじれてなかなか合意に至らない…。自分には無関係の「ドラマの中のこと」と信じたいのですが「よくあるもめるケース」と“ある”マニュアルで紹介されていました。また現代は「家族のカタチ」は「多様性」を帯び、ますます複雑になってきています。結婚したカップルのうち約26パーセントが「再婚カップル」というデータ(平成25年の厚生省発表のデータより)があり、子連れの再婚と初婚、再婚同士など家族関係が複雑な場合も「もめる」原因につながります。実際の『縁』でつながっていない登場人物(相続人)がいるから余計にこじれるのでしょう。

 このような「相続争い」を避けるためにも、自身の意向を伝えるためにも「遺言書」を用意する、という方法は有効だと考えられています。

大きく分けると「遺言書」は2種類がある

「遺言書」で守る家族の『和』

 「遺言書」には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
「自筆証書遺言」は、遺言者本人が自書さえできれば、1人で作成する事ができるので自由度が高く費用もほとんどかかりません。一方「公正証書遺言」は法律専門家などの公証人に依頼して行う遺言です。財産価額によって手数料が発生します(弁護士に依頼した場合“相場として”遺言書の作成費最低10万円以上、執行など最低30万円以上)。

 「自筆証書遺言」は、これまでは「自宅」で保管される事が多く、遺言者の死亡後「遺言書」をなくしたり、その存在を相続人に発見されなかったり、一部の相続人により廃棄や隠匿改ざんされる恐れがありました。そのためそのデメリットを解消するために令和2年7月10日に「自筆証書遺言書保管制度」の開始されました。自筆証書遺言の自由度と気軽さというメリットは損なわずに「遺言者の最終意思の実現」と「相続手続きの円滑化」効果が期待できます。

「自筆証書遺言書保管制度」を利用するには…

 相続に関係する家族の争いは「遺言書」の作成で防げる…とお伝えしました。相続争いが年々増加傾向(裁判所ホームページのデータより)にもあるため法律専門家やライフプランナーなどFPの協会も「遺言書」を作成し「円満相続」を推進しています。特に「自筆証書遺言書保管制度」は「公正証書遺言」に比べ費用がかなり抑えられるため、気軽に作成できるようになりました。
「自筆証書遺言書保管制度」を利用する上で、特に伝えたいポイントは3つあります。

  1. 1.費用が抑えられる(保管の申請手数料は遺言書1通について3900円)
  2. 2.遺言者本人が法務局で手続きをする必要がある(付添人同伴はOK)
  3. 3.遺言者本人が全て手書きする

この3つから、「自筆証書遺言保管制度」を利用するには「心身ともに元気」であることが大きなポイントです。本人出頭義務が課せられているため、本人が法務局に行けない場合は利用することはできません。法務局へ行く事ができる!が大前提な制度なのです。

手軽といっても…追加の伝えたいポイント

  1. 4.「遺言書」の書き方の指導を法務局はしてくれない
  2. 5.申請するには予約が必要(インターネットか電話)
  3. 6.手続きには約50分程度必要
「遺言書」で守る家族の『和』

「遺言書」の作成について、相談も指導も法務局はしてくれません。申請書や請求書は法務局のホームページからダウンロードできます。またマイナンバーカードがあると申請時にスムーズだということも加筆しておきます。マイナンバーカードで便利になることはこれからますます増えそうですね。時間の余裕のある時に、早め早めに作成しておくのもいいのかもしれません。

まとめ

 ご自身の希望に沿った「相続」がきちんとできるように、残された家族が争わないように創設された「自筆証書遺言保管制度」ですが、まだまだ課題点も多いと言われています。遺言の作成に指導も審査もしないため、内容に不備があった場合は『執行できない可能性』も捨て切れません。
 このコラムでは「自筆証書遺言保管制度」が新設されたことを知っていただくために「ポイント」を絞りました。この制度は「自分自身」で行う必要があるために「冒頭」の3つの要件についてお知らせしました。心身ともに「元気なうち」にこそできる「家族を守る」方法のひとつなのではないでしょうか?

【参考】

法務局における自筆証書遺言書保管制度について(法務省)

© 2021 澤渡裕子