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終活:実家の片づけはどうする?『北風と太陽』ならあなたはどっち?

「片づけても…結局…元に戻っちゃう」(汗)

老親の住環境を快適にするために労力を費やしたのに…「結局元に戻されてしまった」という子世代の嘆きに近い声は、立場上…高い確率で耳に入ってきます。高齢者に多い〔モノが捨てられない〕タイプは次の通り…。

1.年齢的に心身ともにおっくうになる
2.戦中・戦後に育った人はモノを捨てられない、大事にする気持ちが強い
3.将来が不安だから“いつか”に備えてモノをとっておく

主にこの3つ。

「安全に快適に暮らして、健康に長生き欲しいから」という子どもの“心”、“親知らず”…。頑張っただけ子世代の脱力感をお察しするのです。

老親宅の片づけ(生前整理)は、子どもや孫の手を借りることが不可欠です。しかし、子世代が“主導権”を握って「片づけ」ると、冒頭の嘆きように「元に戻ってしまう」傾向にあります。では何に気をつければ良いのでしょうか? その決め手は「心の整理」。いくつかポイントがあります。

親でも言わなきゃわからない

まず子世代の思いをしっかり伝えましょう。「家具やモノが多いと、つまずいたりして危ない。安全で快適に暮らして、元気に長生きして欲しい!」と素直な気持ちを口に出すことが大切だと考えます。「こんなにモノが多くて、どうするつもり?片づけようよ」は禁句。片づけ=捨てろ!と結びついてしまいます。モノを捨てられない老親の気持ちをより硬化させてしまいます。イソップ物語の『北風と太陽』で例えるならば、太陽の役割りに徹しましょう。ご自身の片づけよりかなり(相当)「時間が必要」だということを覚悟する必要があります。

見える化する

思いを伝えたら、次は「現実を見てみる」プロセスに進みます。プロの整理収納のアドバイザーの体験談ですが、老親の片づけを手伝ったらお父さんの老眼鏡が、なんと!「14」も出てきた!というのです。無いと手元が見えない、100円均一でも気軽に購入できるほど安価というこのダブルの影響が、増えてしまった理由として考えられます。忘れたらその都度買っていたのでしょう。そのアドバイザーは「14」もの老眼鏡を一箇所に集めました。これにはさすがのお父さんも「あれ?こんなにあったかな?」と驚いたそうです。一人に老眼鏡そんなに必要か??「見える化」することで老親に“気づき”が生まれるのです。自然と「こんなに使っていないし、壊れているのもあるし、合わなくなっているのもある」と自覚できれば、“手放す”決心がつきます。

一度に大規模な片づけは禁物

現役子世代の「仕事が忙しいから」「遠いから」という理由で、なんとか【短期間】で終わらせようとするのは、NGです。できる限り小分けしましょう。例えば食器棚なら箸、フォーク・スプーンなどの引き出し1段だけに限定します。タンスを、押入れを、クローゼットを、リビングを、アルバムを「家丸ごと一軒!今日で終わらせるぞ!」というのは不可能です。モノの量にもよりますが、プロがフォローするにしたとしても、計画として無理があり、成り立ちません。
長い年月をかけて、モノが増えていったのですから、一朝一夕に「片づけ」ができるわけがないのはお分かりいただけるでしょう。では小規模スペースを限定して、小さく「片づけ」を根気強く続けていきましょう。次は、お皿、カップなどの食器類に範囲を広げていきましょう。着るものならば、下着だけ、夏物のトップスだけなど、〔小さな成功体験〕を積み重ねて、日々取り組めるように老親の背中をそっと押す、くらいの方がうまくいくようです。重たい・高い場所のモノの移動は、高齢者には困難です。子世代と孫世代でフォローするようにしましょう。

「これ要らないよね?」

つい言ってしまいがちなセリフです。子世代が必要かどうかを判断してしまうことは避けましょう。親には親のモノに対する思い出や、気持ちが込められています。たとえ親子でもその思い出は、言ってもらわない限り、どこにも書いていませんから、その大切さは共有できません。「片づけ」ることで、親子関係がギクシャクする、なんて本末転倒です。今は捨てられなくても、小さな成功体験で「スッキリを実感」できていけば、そのうち「手放そう」という気持ちに変化していく高齢者を何人も見てきました。それと注意が必要なのですが、高齢になると「あれ?どこやったっけ」と、処分したにもかかわらず、そのこと自体を忘れてしまうこともあります。プロのアドバイザーは、「何をどうした(どこにしまった)」を写真を撮ったり、メモして共有したりするようにして、トラブルを軽減するようにしています。多少手間がかかりますが、子世代自身も「忘れて」しまわないようにする工夫が必要でしょう。

社会貢献ができる、となれば?

モノのない時代を過ごした世代は「モノを捨てる」ことに抵抗感が強い傾向にあります。しかし、使っていない不要品で「人の役に立つ、社会貢献につながるなら手放してもいい」と、考えるのではないでしょうか? 喜んで使ってくれる人がいるならば、心の充足感も得られます。私も子どもたちの幼少時代から溜まった「大量のぬいぐるみ」を途上国の孤児院に寄付する団体に托したことがあります。海の向こうの可愛い子どもたちが、ぬいぐるみで楽しく遊ぶ姿を思い浮かべると嬉しくなりました。このように不要品の寄付で社会貢献ができる、となると老親も「手放す」ことを検討しやすいのでは? その情報はインターネットで紹介されていますので、子ども世代が申し込みなどはフォローしましょう。

まとめ

老親宅の「片づけ」は生前にしても、遺品整理にしても気の重い作業だと感じる人がほとんどです。親の「整理」を手伝うのは「快適に身軽に暮らして、いつまでも。元気で長生きして欲しい」という子どもや孫の願いなのです。ですから「やっても仕方がない、どうせ元に戻っちゃうから」とあきらめずに、思いをしっかり伝えて少しずつ始めてみるのはいかがでしょう? 老親が元気なうちに「一緒に」整理ができるのは…とても幸せなことです。
© 2020 澤渡裕子